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プレス機械の構造を解説します
プレス機械を理解してもらう上で大切なのが「どのパーツがどんな機能を果たすのか」だと思います。
この記事では自分でのおさらいも含めて「一般的なC型電動プレスの構造」を画像付きで解説していきます。
そもそもプレス機械がどんな機械なのかという点については下記をご覧ください↓
それではさっそくプレス機械の構造について解説していきます。
プレスの構造【カウンターバランサー】
上の手づくり構造図を見てもらうと、プレス機械本体いちばん上に出っ張っている部分がバランサーです。
カウンターバランサーとは、構造図にあるスライド部分と上型の重量を支える役割を持つ筒形のシリンダーです。
これが無いとスライドとシャフトの連結部分に稼働時に隙間ができてしまい、負荷や衝撃が起きてしまいます。
呼び名は縮めて「バランサー」という場合もあります。
このスライド部を支えるバランサーの機能によって、スライド調整がかんたんにできます。
バランサーの中には数種類のパッキンが組み込まれていて、パッキンが破れてしまうとエア漏れを起こし、シリンダーパッキン交換が必要になってしまいます。
プレスの構造【主電動機駆動】
主電動機とはカンタンに言うとモーターのことです。
主電動機(モーター)から動力が伝達されてプレスが駆動します。
このプレス機械のモーターの回転数がSPMという単位で表され、プレスの能力の指標になります。
モーターの回転数SPM、RPMについては以下で詳しく解説しています↓
プレス機械の動力の伝達を詳しく解説すると(詳しく知りたくない方は読み飛ばしてください)
主電動機から動力発生→モータープーリ→Vべるとによりフライホイルへ
→フライホイルに連結している入力軸とクランクシャフトを駆動させるドライブピニオンを支持している出力軸の間にはクラッチ・ブレーキユニットがあり、これによって両軸が分離
→空圧によってクラッチがつながるとブレーキ開放し、入力軸の回転がクラッチを介して出力軸へ
→このクラッチから出力軸への回転により、メインギアを駆動
→クランクシャフトを回転→スライドが上下しプレス作業ができる
となります。
このクラッチやブレーキユニットなどが入っている箱が「トランスミッション」と呼ばれるものです。
トランスミッションについては次で解説します。
トランスミッションの構造
先ほど解説した主電動機の動力をメインギアに伝達するまでの構造が入っている場所がトランスミッションです。
トランスミッション内はオイルがひたひたに入っており、クラッチやブレーキの摩擦板、ベアリングや軸受け、ギアなどの潤滑の機能を担っています。
また、もう一つの機能として放熱する役割もあります。
クラッチとブレーキ板は摩擦する構造上、摩擦熱を発しますので、その熱を外周のフィンでトランスミッション内から外へ放熱する役割です。
トランスミッションオイルは構造図のフレーム側面にある油面計で油量を確認できます。
プレス機械を故障させないために定期的に交換するのがおすすめです。
プレスの構造【フレーム】
プレス機械のフレームとは、機械本体を支えるボディです。
上の写真のように横から見たときにアルファベットのC型になっているプレスをC型プレスと言います。
一方、口開きの部分もストレートにフレームがあり門のような形をしているプレスは門型プレスと言います。
C型プレスの方は金型の出し入れがスムーズで取り回しがきく特徴をもっており、逆に門型は口開き部の横がフレームなのでC型と比べてしまうと出し入れしにくい形状になってます。
剛性は門型の方が強くより高負荷な作業をするプレスに採用されます。
出典:コマツ
↑門型プレス
プレスの構造【スライド】
上型を取り付けて実際に製品をプレスするために上下運動する部分がスライドです。
スライドには、
・スライド調整装置
・油圧式過負荷保護装置(オーバーロードポンプ)
が内蔵されています。
・スライド調整装置とは
→プレス機械のダイハイトの調整を行います。
ボタン操作でアジャストスクリューを上下させてスライド高さを調整します。
やり方はカンタンなので誰でも調整が可能です。
・油圧式過負荷保護装置(オーバーロードポンプ)とは
→作業中に過負荷が発生するとそれ以上金型やプレス本体に被害がいかないように急停止させるためのポンプです。
過負荷が発生すると油圧室の油を瞬時に開放し隙間を作り負荷を逃がします。
それと同時にリミットスイッチが作動し、プレス機械のスライドを急停止します。
プレスの構造【電気ボックス】
プレス機械の構造の中でも「電気系統」が集約されている場所です。
大きくわけるとプレス機械向かって右側の「電気ボックス」と主電源などのメインのボタンが付いている「ペンダント操作ボックス(写真参照)」。
機械手前の両手押しボタンが付いている「手元操作ボックス」の三つです。
また、電気回路を役割でおおきく分けると二つあり、
動力部と制御部に分けられます。
動力部(AC200V):主電動機、スライド調整パワーパッケージ電動機、潤滑ポンプ用電動機
制御部(AC100V):操作スイッチ、電磁弁
電気ボックス内部には過電流が起きた際にプレス機械の電装部品や電気系統を守る役割の配線用遮断器(サーキットプロテクター)、サーマルリレーなどが存在します。
出典:モノタロウ
↑電気制御盤内にあるサーマルリレー。機種によっていろいろな形があります。
プレスの構造【ボルスタ】
プレス機械におけるボルスタとは、下型を載せてプレス加工をするテーブルです。
この写真はダイクッション仕様のプレスなので、クッションピンが通る穴が等間隔に開いています。
基本的にプレスのボルスタはT溝というTの形をした溝が掘って有り、ここに金型をセットして使用します。
このほかに抜き加工用の角穴や丸穴が中央に開いている形状のボルスタもあり、用途によって選びます。
スライドを一番下に下げた状態でスライド下面からボルスタまでの長さをダイハイトと呼びます。
プレスの構造【ダイクッション】
ダイクッションとは、プレス機械フレーム内のボルスタの真下に内蔵されているポンプ式のリフトテーブルのような装置で、絞り加工のときに製品のしわを抑える役割や、下部ノックアウトの機能として使用します。
ダイクッションはプレス右側にあるダイクッション圧力計で圧を確認しながら、調整ハンドルを回しながらダイクッション圧力を調整します。
プレスの構造【光線式安全機】
出典:理研オプテック
光線式安全機とは、プレス機械による事故の危険性を事前に防止するための機能を持つ光軸が遮断されると機械が急停止する部分です。
光線式安全機は片方が発光側でもう片方が受光側になっています。
光線式安全機のメーカーは理研オプテックというメーカーが有名で数多くのプレス機械に採用されています。
この光線式安全機には取付位置が決められていて、設置条件を準拠していないと監督署に警告されてしまいます。
まとめ
今回はプレス機械の構造について解説してみました。
プレス機械は、
カウンターバランサー
主電動機(モーター)
トランスミッション
フレーム
スライド
電気系統
ボルスタ
ダイクッション
光線式安全機
知っている方もおさらいしておけばトラブルの際に役立つ情報なので安心です。